当ブログでは、IDA DESIGN代表の伊田昌玄が、阪急王子公園駅徒歩3分の新事務所についてご紹介しつつ、設計やデザインについて述べております。第五回は『黒の扱い方』について。
<目次>
住空間の中の黒
日本文化の中には、古くから書道、墨絵、また住宅とは大きく離れますが漫画の世界でも白黒の世界で表現されています。これらは世界の中でも高く評価されており、日本には黒をうまく使う文化が続いてきているように思います。
住空間において黒を使うという事は、意外と勇気のいるケースが多いのではないでしょうか。
なぜなら黒を使うことによって、暗く、閉鎖的になってしまうケースがあるからです。
黒が使われるケースとして考えられるのが、インテリアスタイルでいう「インダストリアルスタイル」や「ブルックリンスタイル」といわれるような、工業的な要素を取り入れ無骨でスタイリッシュな特徴のあるインテリアがあります。
この場合、黒く焼付け塗装をした鉄を使って雰囲気を出す場合が多く見られます。ただ、この黒の面積や、使い方を間違うと圧迫感がでてしまうことが懸念されるので、バランスを見ながら慎重にデザインする必要があります。
黒の取り入れ方のヒントは影
私が黒を使う時は、空間を広く見せたり、何か他に目立たせたいものがあるシチュエーションです。
先ほど、「住空間の黒は、暗く閉鎖的になるケースがある」と言っていたにも関わらず、空間を広く見せるとはどういうことなのか。その黒の取り入れかたのヒントは、自然の影にあるのです。
自然界の中で本当の真っ黒というのは滅多にないのですが、私達は日々無意識の中で黒に近い色をたくさん見ています。
それは「影」です。
光が届かない部分は影になり、その影の黒があるからこそ明るいところがより明るく感じたり、光が届かない奥の部分が暗いから奥行きを感じる、ということがあります。
住空間のなかで本当の影を利用することもありますが、黒を使うことによって対比で影を感じさせ、そのような効果を狙う場合があります。
黒という色は無彩色なので、濃淡をつけるか、面として太くするか細くするか、で表現します。書道、墨絵、漫画などを参考に、そのようなバランスを考えながらテクニックとしてデザインしていきます。
事務所での実際の取り入れ方
今回の事務所は天井高が高いということで、ある程度の広さは感じられます。しかし事務所入口から奥の壁面までの距離があまりなく、奥行きが感じにくいことがあります。
事務所に一歩入ったときの印象として、開放感、奥行き感のある空間にしたかったので、ここで黒を効果的に使うことにしました。
具体的には、事務所の奥にある壁面や動かせない大きな躯体の柱周り等に、黒を使いました。効果的に影の仕掛けとしてバランスを考え、取り入れました。
このことで一般的には黒は圧迫感、閉鎖感があるようにされる色ですが、全く逆の効果を生み、広がり感や開放感を感じさせることができたのではと思います。
次のステップとして考えたことは、その黒を空間になじませる工夫をすることです。
なぜなら黒を空間に取り入れると、悪目立ちしたり違和感を感じる事があるからです。
具体的には手すりにつけたバーの部分だったり、照明器具の一部分だったり、色々なところに少しずつ黒を取り入れています。無意識の中で黒が馴染んだ空間を目指しました。
建築的に、開放感、奥行き感、立体感など出せるときは問題ないのですが、そのような方法が取れない場合でも、今回のような色の使い方でカバーする方法があります。
住空間で黒色を取り入れることは、少し勇気がいることです。
バランスや取り入れ方を間違えると効果的でなくなってしまうことから、積極的に住空間に黒を使いましょうというよりは、効果的に使う方法論の一つをお話させて頂きました。
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