JOURNAL

『錯覚中庭』新オフィス紹介

この度、IDA Companyは阪急王子公園駅より徒歩3分、水道筋商店街の入り口近くに、新事務所を移転いたしました。

天井高があり、前面サッシも大きく開放的な空間です。

オフィスで働く仲間もそうですが、お客様との打ち合わせなど、たくさんの時間を費やす場所のため、快適さだけでなく、空間を楽しむ要素もたくさん入れ込んでみました。

少しずつですが、こだわりの詰まった事務所の内装を何回かに分けてご紹介していきながら、私のデザインの考えなどをお伝えできたらと思います!

第二回は『錯覚中庭』について。

鉄筋コンクリート造の事務所に中庭を作りたい?!

昔は、平屋などで庭のある生活もよく見られましたが、昨今、タワーマンションや住宅密集などで、なかなか庭付きの住宅に暮らすということが容易ではないケースが増えてきました。庭では四季を感じて訪れる鳥や虫や花を楽しむことができます。そんな四季を感じられる庭を事務所の中に作りたい、と考えました。

しかし、流石に鉄筋コンクリートのビルの事務所の中に庭を作るだなんて現実的には難しい話です。その妥協策として、オフィスに観葉植物を置いているケースをよく見かけます。もちろん今回の事務所の中にも観葉植物は置いていますが、もう一歩、思い切ったアイデアで工夫ができないかなと考えました。

まず外に庭をつくる

現実的に今回のビルの中に中庭を作るのは難しかったので、事務所入口外のエントランス部分に庭を作りました。
その庭は、12ヶ月間、四季折々のいろんな花や植物を楽しめるように、変化を楽しむことができるように考えました。

事務所の前面は大きなガラスのサッシなので、眺めれば外に庭が見えます。
でもその庭を何とか事務所の中に取り込んで、ぱっと見たときに、坪庭のように感じられるようにできないかと考えました。

事務所の入り口入ってすぐに邪魔な大きな柱の存在

マンションや事務所ビル、ビル内の店舗工事などでは、建物の構造的に必要な大きな柱がどこかにあります。一辺が1mを超えるような大きさのものもあり、圧迫感もありとても邪魔なものです。

今回の事務所でも、そのような大きな柱があり、しかも入口からすぐの場所にありました。

この邪魔な大きな柱問題、設計の段階でよく頭を悩ます部分なのですが、今回、この大きな邪魔な柱の課題の解決と中庭をなんとかしてできないかという2つの課題を合わせ技で解決する方法を考えました。

錯覚を利用する「錯覚中庭」

2つの課題の解決策として、鏡を使うことにしました。
大きな柱に床から天井まで、目いっぱいに鏡を貼りました。
そのことで、入り口から入ってすぐの大きな柱に、エントランス部分の庭が映り込む効果が得られました。

入り口からの導線上、入ってくる人は柱の存在を感じるよりも先に、鏡に写ったエントランスの緑が目に入り、室内に入ってきたにも関わらず、中に緑が感じられる、という鏡による錯覚効果を感じるのです。これを私は「錯覚中庭」と呼んでみることにしました。

単純に鏡を貼るだけでは「錯覚中庭」の効果が得られにくかったので、鏡の周りの環境を工夫してみました。少し室内の照度を落としたり、ガラスを組み合わせたりといったことなどを採用し、自然な遠近法でより効果が得られるようになりました。

こういったことを複合的に採用したことにより、邪魔な大きな柱問題の存在が薄れ、「錯覚中庭」が感じられるという、マイナス部分のデメリットをなくし、緑や空気感を感じられるようにするといった狙っていた事を実現するといったことができたのではと思います。こういったところもデザインの面白いところだなと思います。

鏡を利用する

今回、事務所内に中庭がほしいというとんでもない発想からでしたが、住宅などのリノベーショでも鏡を効果的に使うケースはよくあります。

全面鏡を貼るというのではなくても、姿見なんかを効果的に壁にとりつけたり、アートっぽいフレーム付きの鏡を、それこそ絵画をディスプレイするようにインテリアにとりいれたりといろいろ活用できます。

もちろん、今回のように全面に鏡をはって、といった建築的に鏡を利用することも可能です。使い方によっては、部屋の奥行きを感じられる効果や光の広がりの効果を狙ったりすることがあります。
ただ鏡を貼るだけでは見たくないもの、見せたくないものが写ってしまったりだとかということも考えられるので、そこは効果的に設計したいと思っています。

今回の事務所内の邪魔な大きな柱の存在は、空間に圧迫感をもたらす大きなマイナス要素です。
このマイナス要素に鏡という素材を工夫し使うことで、ゼロにするのではなく、緑や奥行き感、広がり感を得られる「錯覚中庭」を感じる事によって、大きくプラスにするという発想は住宅のリノベーションに通じるところだと思います。

リノベーションでは既存の建物を利用する観点から、動かせないものなど様々な限られた条件の中で、マイナス要素もプラスに替えて、やりたいことを実現できるよう設計、施工していくのが醍醐味だと思います。
色々な設計手法やデザインでお客様の「好き」を感じられる空間作りのお手伝いをさせていただけたらと思います。

IDAジャーナルとは
住宅やマンションのリノベーションを手がける《IDA Company》のWEBマガジンです。 リノベーションのこと、デザインやインテリアの話し、普段あまり表に出てこない職人トークなど。 このJOURNALを通じて、一人でも多くの方に、新築ではない「リノベーションという選択肢」そして、それに携わるIDA Comanyチームについて知っていただけると嬉しいです。

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