株式会社 IDA Company(アイディーエーカンパニー)代表の伊田昌玄です。神戸市灘区を中心に住宅・商空間のリノベーションを手掛けています。少しずつですが、リノベーションについて、インテリアのコツ、デザインの現場などから思うところをお伝えできたらと思います!
今回は『木視率(もくしりつ-mokushiritsu)』について
<目次>
木視率ってなに?
一般には馴染みのない言葉かもしれませんが、空間を設計するときには、建築用語の『木視率(もくしりつ)』というものを意識しています。
木視率とは、部屋の中に立って、その空間に木材がどのくらい見えるかの割合を表したもの
です。床、壁、天井とすべて木肌がみえている場合は木視率100%となります。
では、なぜ木視率を意識しているか。
みなさんも普段、感じられているかと思いますが、木には眺めるだけでリラックス効果があり、心身に安らぎをもたらします。住空間では一般的には20-80%ほどで構成されているケースがよく見られます。木視率は高ければ高いほうがよいかというと単純にそういうわけではありません。80-90%の空間はというと、サウナやログハウスのような空間でしょうか。木肌がたくさんみえてそれはそれで良いのですが、その空間に長くいると飽きがくるという実験の結果があるそうです。デザインする立場としては空間としての面白みも少し足りない感じがします。逆に20%くらいと低く抑えるとなんとなく落ち着かないと感じる結果があるそうです。
では人が快適に感じるのはどのくらいの割合かというと、約30-40%ほどになるそうです。そういった実験の結果などから空間を設計するときには、木視率30-40%を目安として意識しています。
木視率を意識して快適な空間にする方法
実際に木視率30-40%に設計するにはどういったやり方があるのか。
部屋の大きさだったり、形だったりにおいて実際は違う場合もありますが、部屋全体を100%とし、おおよそ床20%、壁60%、天井20%と考えます。よくあるのは床材にフローリングを採用します。床全体が木になるので20%確保できます。30-40%には少し足りないので、ということで壁全面にも木を採用するとプラス60%で合計80%となってしまいます。これでは木が多すぎて少ししつこくなります。そこで、壁には採用せず扉や家具で木を採用し、それをプラス10-20%ほどの割合とし、理想の30-40%を確保します。またフローリング材に可能であれば無垢のものを採用したりして快適な空間をつくり出すことはよくある事です。
一方、住空間の中で木視率の理想とする30-40%の数字だけを目指して考えると、その空間は良い空間となるのでしょうか。
例えば床と天井の全面に木を採用すると数字としては合わせて40%となります。ただ、理想の数字を追うことだけで、それが空間的に楽しいか、自分にとって居心地がいいか、というのはまた別問題になってきます。もちろん好き嫌いや、狙いたいインテリアテイスト、また置く家具との相性など、そのあたりを総合的に考えていくのがインテリアデザイナーの仕事だと思っています。
やりたいインテリアテイストをしっかり確保しつつ、一方で木視率も30%-40%をめざしていくことで、好きな空間、かつ居心地の良い空間が実現できる。そう思いながら、日々デザインをしております。
木視率だけに頼らない設計
私の祖父は大工さんで木を扱うプロだったということ、また技術を受け継ぐ大工さんたちも周りにたくさんいるので、基本的に木を使うのが大好きな会社ですし、私個人も大好きです。
木視率を重視したデザインでよく見るのが、先に述べた床材にフローリングを採用し20%を確保、扉や家具でプラス10-20%とし合計30-40%とするやり方です。
ただ、IDA Company(アイディーエーカンパニー)さんのデザインちょっとほかとは違ってていいよね、とのお言葉をいただいたり、ちょっと変わったことをしたいというご要望もよくあります。そういった場合は、例えば床材にフローリングを採用しないで空間をデザインすることがあります。しかし一般的によく使われる、床にフローリングを採用しないことで20%の木視率が減ることになります。
その場合の解決策として壁、天井、家具、照明器具などトータルバランスを考えながら木を採用し、木視率30-40%を目指しデザインすることがあります。その際、ただ木を採用するだけでなく、可能な限りプリント材ではなく無垢材を使ったりと質感も大切にしながらデザインします。
しかし一般的でない、少し他とは違うデザイン、オリジナルなデザインをめざしながら、木視率の確保というのは難しい面もあります。木視率の確保のためだけに木を採用すると、少し飽き飽きした空間や、いたって普通の空間になってしまうことがあるので、このような場合は木という素材だけにこだわらす他の自然素材をプラスで使うことで、空間としての居心地の良さを補う工夫をしています。具体的には、漆喰や竹などを使ったり、網代天井などを採用します。それぞれ木視率の数字としては入ってこないけれども、工業物とは違い、木視率の目的とするリラックスや快適な空間へと繋がっていくことを考えています。
このように柔軟に、お客さんが目指したいインテリアテイストや、空間の快適性を追求していきます。
それができる理由は、IDA Company(アイディーエーカンパニー)のスタートがもの作りの工務店だということがあります。その空間空間に応じて、臨機応変にこれは既成の商品を取り入れよう、これは職人さんとオリジナルで作り上げよう、というのを予算や状況に応じて使い分けられる提案力と技術力があるからだ思っています。
それが当社の特色でもあるので、そこを意識した設計を行い、お客様の理想の住まいへのお手伝いを一緒にさせていただけたらと思っております。