リノベーションで住まいのインテリアを一新しようとするならば、壁面をどのように工夫するかということが、プランニングのファーストステップといえるでしょう。室内空間の中で大きな面積を占める壁は、目線の位置に存在することもあり、全体の印象を大きく左右するものです。
ヨーロッパにおいては、壁面は「住む人の個性を表現する場所」という価値観が古くから根付いています。お気に入りの家具の配置をプランし、お気に入りのアートや小物をどのように見せるかを考える、そのイメージによって壁面の色やテクスチュアを選定する、つまり、壁面まで一体としてデザインすることで、自分らしいインテリアが完成すると考えられているわけです。
一方日本では、一般的に壁を飾るという発想には乏しいかもしれません。しかし元来「わびさび」の言葉に示されるように、日本においては素朴さや、静寂、余白の美を楽しむ傾向にあるものの、襖絵へのこだわりや、季節の移ろいに合わせた掛け軸など、壁面にも美意識が向けられていました。
現代の日本の分譲住宅、分譲マンションでは、洋室の壁に白のビニールクロスが貼られているのが一般的です。コストも安く、なりより好みが分かれず無難であることが理由でしょう。しかし、時代とともに私たちのインテリアに対する意識は変化し、自分好みのオリジナルな空間を求める傾向が強くなってきました。
壁の色や材質を変える、壁にアートを飾る、壁のオブジェで陰影をつくる、といったアイディアによって、室内空間は新たな魅力を放ちだします。
さてここから、今回は3つの壁の仕上げについてご紹介いたします。デザイン豊富なクロス、色彩豊かなペイント、テクスチュアが楽しめる左官… それらの素材や工法を、歴史的な視点も含めてご紹介いたします。
<目次>
WALL PAPER ― クロス
壁の仕上げの中で、国内で最も普及しているのがクロスです。中でも施工性に優れ、安価なビニールクロスが人気ですが、欧米では、紙クロスや布クロスが一般的です。最近ではテクスチュアのあるクロスのバリエーションが広がっています。
クロスを選ぶ視点は、空間のイメージや、家具のレイアウトによって変わります。壁面をクロスで楽しむには、大胆な柄のクロスを壁の一面のみに貼る、ベッドヘッドに当たるクロスを異なる色柄のクロスにするなど、空間のアクセントとして用いる方法も可能ですし、アート性の高いクロスをフォーカスポイントとした空間づくりも可能です。
●紙クロス
16世紀頃、防寒と装飾を目的として高級な布を壁にかけていたヨーロッパで、そういった布に代わり、量産できる壁の仕上げ材として紙製のクロスが開発されました。以後、ヨーロッパではクリエーターがデザインする製品も多く見られ、室内装飾の大切なアイテムとされてきました。
クロスの幅は、欧米では52~54㎝が主流、これはバロック後期にヨーロッパを席捲した革製クロスの企画を引き継いでいるそうです。肩幅ほどのサイズなので一人でも貼り替えやすく、欧米ではDIYが習慣的です。一方、日本においては92㎝の幅が主流で、クロス職人が専用の機器を用いて施工する場合がほとんどです。
●布クロス
高級な布を壁に飾る習慣のあったヨーロッパにおいて、布クロスは高級感あふれる素材として現在でも人気です。ベルベットやスエードのような重厚感のある素材は、ホテルの客室で使われるケースも多くみられます。
布は伸縮性が高いため、施工には一定の技術と手間を要します。また、汚れが付着すると取れにくいという弱点があります。
●ビニールクロス
ほかのクロスに比べて、施工が簡単で種類が豊富、メンテナンスもしやすいといった理由で、国内では最も普及しています。コストも紙クロスや布クロスの半額程度とリーズナブルですが、最近は上質なデザインも増え選択肢が広がりました。
樹脂や接着剤の劣化により、継ぎ目部分がはがれやすくなるほか、通気性が低く結露の原因となることもあり、5~8年程度で貼り替えるのが望ましいです。
●そのほかのクロス
ガラス繊維、石、土、金属などを主原料とした無機質系クロスや、コルクなどの木質クロスなどがあります。無機質系素材の中でも、聚楽(じゅらく)や漆喰、珪藻土を用いたクロスの風合いはまるで塗り壁のようですが、本来の調湿や消臭の効果はほとんど期待できません。
消臭や抗菌効果のために表面を特殊フィルムで加工した機能性クロスもありますが、機能を求めるほどもとの質感は損なわれます。
●IDAオリジナルクロス
IDAカンパニーでは、壁の大きさや形状に合わせ、また設置する家具なども想定し、デザイナーが絵を描くようにオリジナルクロスを作成いたします。クロスデザインはビニールクロスに印刷し、施工させていたきます。
PAINT ― ペイント
壁を塗料の被膜で覆うペイントは、日本では江戸後期から明治初期に導入されたもので、近年では、欧米のように自分で気軽に塗り替えてリノベーションする文化が根付きつつあります。
ペイントの魅力は豊富なカラーバリエーションです。ペイントの種類によっては、厚みに強弱をつけて、陰影のある質感に仕上げることもできます。また、色の組み合わせでボーダー柄や、幾何学模様のようなデザインも描くことが可能です。また、均一に仕上がるローラー、刷毛目が表現できる刷毛塗りなど、仕上げの方法によってテクスチュアが異なるのも魅力です。 素材は、海外製品を含め、厳しい安全基準が設けられているため、ホルムアルデヒドなどの有害物質やVOC(揮発性有機化合物)もほぼ含まれていません。
PLASTER ― 左官
石灰岩を主成分とする漆喰、多孔質で調湿や脱臭の効果を持つ珪藻土、きめの細かい素材感が楽しめる聚楽壁など、左官仕上げといっても種類は様々です。いずれもコテや刷毛、ほうき、ローラーといった道具を用いて、職人技により多彩なテクスチュアを表現していきます。
色砂や色土などの骨材、スサ、もみ殻、貝殻といった装飾材を加えることで、色や仕上がりのバリエーションは無限に広がります。
日本では、左官は一般的な仕上げとして古くから引き継がれた工法ですが、ボード類を用いる乾式工法が主流になると、従来の湿式工法は、乾燥の手間とコストが掛かるため激減してしまいました。それでも厚みのある塗り壁は独特の存在感を放つうえ、吸放湿性や耐火性、さらに化学物質を吸収する効果のある素材として、再び注目を集めています。
壁の仕上げによって、その表情は様々に変化し、空間の印象が一新します。昨今、DIYを楽しむ人も増え、壁から空間づくりを楽しむという発想が日本でも根付きつつあります。
IDA Companyでは、お客様のライフスタイルをお伺いして個性的でスタイリッシュな壁のあり方をご提案いたします。リフォーム、リノベーションの個別相談は無料。神戸市東灘区・灘区・中央区を中心に地域に根ざしたサービスを展開しています。
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IDA DESIGN(株式会社IDA Company)は神戸市灘区を中心に住宅リノベーションを手掛ける地域密着型の会社です。戸建てやマンションのリノベーションに関する問い合わせや、見積もりを承っております。共働き夫婦が快適に暮らすためのリノベーションについてもご相談可能ですので、まずは気軽にお問い合わせください。