JOURNAL

『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる

『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる

神戸市灘区を中心に住宅や店舗のリノベーションを行うIDA DESIGN(株式会社IDA Company)代表 伊田です。

リノベーションは、ご家族の大切な想いや場所を引き継ぎ、新たなニーズやライフスタイルに合わせてアップデートができます。そんな家族の歴史を大切にしながら進めた『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえろうと思います。

1.住まない家になぜ手をいれるのか?

『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる

最初のご依頼内容は戸建住宅の外壁塗装の塗り替え、室内はトイレの交換、クロスの張替えといった、いわゆるリフォームの内容でした。そのようなリフォームのご依頼も日頃からさせて頂いていますので、今回の場合も現場にお伺いし、お見積りをさせていただくといった流れになると思っていました。

ところが、いざ現地でお話を聞いていくと、通常のリフォームとは違った点がありました。それは、このお家は今誰も住んでいないし、今後住む予定もないということでした。

それなのになぜ手を入れられるのか。

今回の家はお施主様のご実家で、おばあさま(お施主様のお母さま)がお住まいでした。おばあさまがご健在の頃は、年に数回、親戚一同が集まり楽しく過ごした思い出の場所であるということ。そしてその場所を維持していくためにきれいにしたいということだったのです。

もう少し詳しく聞くと、ただ単にきれいにし、維持するということだけでないように思いました。お施主様の娘さんの思いとして、おばあちゃんの家で親戚一同が集まり、楽しい時間を過ごした思い出はとても大切なもので、しかしおばあさまが亡くなったこともあり、そういった機会が少なくなってきてしまいさみしい思いもあったそうです。

今回、おばあちゃんの家をリフォームしきれいにすることで、維持していくだけでなく、そういった場所があればおばあちゃんがいた頃のように再び親戚一同が集まることができるのでは、といった想いがあることがわかりました。

2.コストを抑えて、想いを叶えるには

その想いをお聞きして、その想いを実現するために他に何かできることがあるんじゃないか、と考えました。

通常では、リノベーションやリフォーム工事において、お客様のご要望に基づいた見積もりを作成すると、予算に収まらないケースが多いです。その理由は、せっかく工事するのだからあれもこれも詰め込みすぎてしまうからだと思います。予算に収まらない場合、ただ単純に諦めてしまうのではなく、お客様のご要望にどのような工夫やアイデアで解決し、満足いただけようにすることが、私の仕事の大部分を占めると考えています。

そして今回のご依頼では、普段住まない家なのでコストは大きく掛けられないし、掛けないほうがよい。だから、コストを縮小したうえで、娘さんの「再び親戚一同が集まれる思い出の場所にしたい」というご要望にどやって応えられるかが大きなテーマとなりました。

元々のご依頼内容である、クロスの張り替えや外壁を塗り替えをしたとしても、今の現状が大きく変わらないのではと思い、お施主様からは言われてはないのですが、予算を下げるアイデア、娘さんの思いを実現するために他のアイデアはないのか、という考えを巡らせながら初回のお打ち合わせを終えたのを覚えています。

3.設計作業

『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる

事務所に戻り、いざ設計作業に入っていくのですが、まずコストダウンの方法として色々考えました。

今あるものを最大限に再利用する方法や、一からオリジナルで制作するのではなく既製品をうまく使うなどして工夫できることはないかと考えました。また、工事で現場に大工さんに入ってもらいますが、材料の余ったものを再利用してできることはないか、ついで作業でやってもらえることはないかなどと考えました。

そういった工夫の積み上げによりコストカットを図りながら、親戚一同の団らんの場とするために具体的にどういったことが良いのかというアイデア出しも並行して進めていきます。

まず、キッチンの向きを変えました。

それはキッチンに一人ではなく複数人立っても作業がしやすくなるからです。遠方より親戚が多く集まることでたくさんの食事の準備などがあるとのことなので、そういったこともみんなでわいわい協力しながらできることを見据えて提案させていただきました。

また食事をとるダイニングスペースにおいては、伸縮式のテーブルを既製品で選び、ベンチも既製品を選ぶことで、普段はベンチとして、大勢の人が集まったときには伸縮式のテーブルを広げ、ベンチを椅子にして利用することを考えました。

こういったことは設計作業の範疇ではありませんが、すこしでもコストを抑えるためネットショップなどで選び商品を選び、集まる人数に対して臨機応変に使える様に考えました。

次に2階のスペースですが、遠方よりこられた親戚の方が泊まっていきたいと思ってもらえるように空間をできるだけ広げ、ゆったりとしていただけるよう、ただ、おばあさまがいたころの面影も残しつつ、快適に過ごしてもらうことを考えました。

『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる
『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる


4.現場作業

『宝塚ファミリーヴィラ』の現場をふりかえる

今回の現場は少しアプローチが違ったのですが、リノベーションというのは一つの空間に対して守るべき予算、工期、デザイン、建築技術、商品選定と様々な要素がある中で、それらをそれぞれ一生懸命考え抜いて、すべてのバランスを取っていき、トータルで考え形にしていくという作業になります。

現場でも職人さんたちとはお施主様の思いを共有していることもありますし、私自身、常になにかもっとできることは無いだろうかと考え続けていたこともあることもありました。そんなことから、ここでこうしたらどうだろうとか、ここをこうしたらもうちょっと良くなるのではと、いつも以上にそれぞれの職人の立場から意見が出てくることがありました。

お施主様からは、ある程度任されていましたので、事後報告になった部分もありましたが、現場でのそういった声も大切にしながら、創意工夫を重ね、チームでものづくりをしていき、お施主様に喜んでいただけるようにと、一丸となり進めていった実感があります。

そんな思いのある現場でした。施工写真だけではこのような背景は伝わらないことがほとんどですが、お施主様の思いを一番大切に形にできたのではと思います。

事例集バナー
IDAジャーナルとは
住宅や店舗のリノベーションを手がける IDA DESIGN(アイディーエーデザイン) のコラムです。 リノベーションの基礎知識や、デザインやインテリアに関することを代表ブログでお届けしています。 コラムを通じて、住宅リノベーションの知識を深めつつ、私たちのことを知っていただけたら嬉しいです。

IDAジャーナル

ご相談はこちらから