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【コラム】タクティカルアーバニズム 2022年に向けて

2021.06.07

2021年も半分が過ぎました。神戸にとって、日本にとって、そして世界的にターニングポイントになりそうな年です。

神戸「三宮駅前再開発」

1995年の阪神淡路大震災により止まっていた三宮駅前再開発が動き出しました。「ひと」「まち」「えき」をつなぎ、神戸の顔としてにぎわいと活力あふれる空間とする。との事です。すでに神戸阪急ビル東館は完成し、駅前の歩行者デッキのコンペ結果が発表されました。生まれ育った街が変貌を遂げていく様を身近に感じられる事は、大きな喜びと期待を抱かずにはいられません。

それと同時に、神戸に育ててもらったモノづくり会社として、果たしてこの神戸の発展の大きなうねりに私たちは貢献できているのか、自問自答です。

 

日本「オリンピック」

東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。グローバリズムという言葉を良く耳にしますが、この言葉は1990年代に使われるようになったようです。そのはるか100年以上前の1896年にギリシャ・アテネで一回目が開催された競技会が今なお続いており、32回目が日本で開催される。歴史や過去は、「今」の積み重ねなのだと思い知らされます。

わが社では現在、神社祠を補修改修しておりますが、着工前は「古い大切な建物」として触れていましたが、今では、80年前の大工さんの苦労や迷いや技術に触れて「名も知らない彼らとのコラボプロジェクト」となっています。オリンピックのように大きなプロジェクトになればなるほど、そこに関わる人、エネルギー、情熱は大きくなります。未来につなぎ、過去を作る「一生懸命な今」は、街、文化、そして人々の心のターニングポイントになるでしょう。

 

世界「コロナパンデミック」

オリンピックが史上初めて延期されました。コロナウイルス感染症の世界的パンデミックの影響です。世界的にも、私たち一人ひとりにとっても、これほど多くの個人に影響を与えた現象は私の人生の中では他にありませんでした。遠い国で起こっている戦争のニュース、毎晩テレビで流れる日本各地のアレコレ、どこか他人事で、たまに読む小説や漫画の主人公の方が私の生活には影響を与えていたかもしれません。

大きな災害があると、精神的な変化は起こりますが、生活様式まで具体的に変わることはありませんでした。マスクを付けたり、旅行を諦めたり、この原稿も事務所ではなく自宅のパソコンで書いていたり、あきらかに個人の生活スタイルが変わりました。

ライフスタイルの変化に応じて自分らしく暮らせるように空間をリノベーションする、それが私たちの仕事です。そのライフスタイルの変化は、文化や環境、個人や家族によって起きるものだと思ってきましたが、それらを無視して一瞬で大変化を起こすことがこの現代でも起こりうるのだと、見せつけられています。

 

IDA Company 「タクティカルアーバニズム」

そんな激動の2021年にわが社は7期目を迎えます。私の祖父が伊田組を創業してからだと66年目となります。

「技術」を追い求めた祖父の背中、その技術をベースに「家づくり」「空間づくり」を仕事にしてきました。そして、そこに住む「人の暮らし」により興味を持ち、「変化するライフスタイル」x「モノづくり」の考え方から、2016年、IDA Companyはリベーション会社として創業しました。

その「人の暮らし」は、どれだけITやAIが発達しても「まち」の中にあります。そのまち開発は、これまでは公共事業を始めとする国や自治体の仕事とされてきました。今なお三宮再開発のように、大プロジェクトが大きな変化をもたらすことはありますが、それだけではない、「ひと」「チーム」単位で変革が起こせるようになり、むしろその動きが「まち」にとって大きな影響を与えるようになっています。

長期的な街の大開発「ニューアーバニズム」では、コロナのような急激な変化には対応できなくなっています。また個人のライフスタイルの変化はそもそも人生100年がMAXの中で、数年単位でやってきます。私たちを取り巻く環境の変化も激動で、スマホが世の中に現れたのは、つい10年ほど前です。

「タクティカルアーバニズム(TACTICAL URBANISM)」とは、個人単位でもできる戦略的な小さなまち開発実験です。

車社会だったニューヨークをタイムズスクエア開発により人と都市の街に変革させたような大きな変化は起こせなくても、街の角にベンチとプランター、そしてコーヒーがあれば、会話が生まれ、人のいとなみがある景色になります。そんな動きがわがまち神戸を見渡してもいくつも起こっているのを感じますし、きっと知らないところでもたくさんあるでしょう。

これまでわが社では無意識の中で、タクティカルアーバニズムの小さな実験をしていました。個人作家向けのギャラリー開設、散歩途中に気軽に寄れるドックカフェや街を感じるテラスカフェ開業など、どれも「まち」とどう関われるかを思考していたように思います。

2022年、より「まち」「ひと」とともに存在価値ある会社になるために“戦略的な小さなまち開発実験”。わが社にとっては「大きなチャレンジ」を起こそうと計画進行中です。

キーワードは、

ライブラリー インテリア アート コーヒー クリエイティブ マーケット 神戸・・・

ご期待ください。2022年には形になって、お披露目予定です。

そして、神戸大好きでクリエイティブな皆さん、何か起こしましょう。私たちは空間デザイン、そしてその施工が得意です。プロジェクトのど真ん中に常に居たいわけでもありません。課題を解決するアイディアを考え、それ以上のものにどうデザインできるか、そして良きものをどうつくり、そこを使ってくれる人の笑顔を見る。

それが好きなんです。

投稿者:伊田昌玄

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